2020年産馬クラシックロード vol.015
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2023年桜花賞はリバティアイランドが期待通りというか、インパクトある印象的なレースぶりで快勝しました。レースを見ていて、ある意味原点回帰の走りだなと感じたのですが、全て芝1600m戦となる新馬からの4戦を比較しながら、その様子を探ってみたいと思います。まずは前半800mの平均完歩ピッチの推移から。
リバティアイランドのジョッキーカメラ映像で鞍上の川田将雅騎手が発した「全然進まんかったわ」という感想通り、テンの100mでのピッチは今回最も遅い値。その後は少し促され若干ピッチを速めていきましたが、しっかりダッシュしていった阪神JFとは雲泥の差。先頭馬が引っ張るペースは阪神JFより遅かったのに前半400m辺りの位置取りは後方から4番目辺り。この中間ははやる気持ちを出させないような調教が続いていましたが、リバティアイランドは落ち着き過ぎるくらい、ゆったりとした気持ちでレースに挑めていたようです。L1300~1200mでピッチが緩んでいるのは外から迫ってきていたラヴェルを前に入れた影響。直後、そのラヴェルとの差が瞬時に開いていきます。後述しますがリバティアイランドの特徴が少し現れているシーン。その後はピッチを速めてじわりと差を詰めていきますが馬群全体のペースはさほど落ちることなく推移したので、リバティアイランド自身も前半700m=L900m辺りまではマイペース的な追走状態でした。今回の桜花賞より遅い馬場だった阪神JFで前半800m通過は45.8程度、それが今回は47.6程度。馬場差を考えると前走比2秒少々遅い中間点通過となっていました。この前半区間だけでも前走阪神JFとは全く質の異なるレースをやっていたことになります。次は後半800mでの平均完歩ピッチの推移。
私が冒頭で「原点回帰」と称した意味合いがイメージできるかと思います。最後の直線の長さが違う分、ラストスパート始動は相違が見られますがL500mからは新馬戦時のあの強烈なラストスパートとそっくりなんです。上がり600mや200m毎のラップは新馬戦より遅いのですが、それはラストスパートまでの追走ペースが遥かに速く、成長度合いを加味しても地面を蹴る力は新馬戦より失われているゆえの事象。また、抜いた頭数も違うので他馬との相対的な印象は異なって感じるかもしれませんが、ゴールまでひたすら伸び続けているように錯覚してしまうイメージは新馬戦と全く同じですね。道中ユルユルのペースだった新馬戦でのラストスパートを、上級レースでも同じように繰り出したということに他なりません。
2戦目アルテミスSでの最後の直線の走りを見て、エンジンの掛かりが遅い馬だなという感想を持った方は多くいたと思います。その一方、新馬戦での上がり600m31.4をイコール瞬発力と見てしまうと、アルテミスSでの挙動と整合性は取れません。速さとは何ぞや、を具現化している格好のモデルケースでもありますね。そのアルテミスSでの完歩ピッチのピーク値は脚を十分溜められるほどの遅いペースだったのにもかかわらず新馬戦や今回の桜花賞まで速くできていません。状態がもう一つだった可能性はあるものの、つまるところ進路がふさがってから一気にスピードアップするような走りはリバティアイランドにとって苦手な分野です。言い換えれば最後の直線が短いコースはツラいタイプでしょう。そして緩から急へと一変するようなレース展開もまた苦手となります。
今回の桜花賞での走りを見て、誰もが過去の名牝とイメージをダブらせたかと思います。それではハープスターとアーモンドアイの桜花賞での走りと比較してみましょう。
各馬の前後半のラップタイムはハープスターが48.6-44.7、アーモンドアイが48.1-45.0、リバティアイランドが47.6-44.5。後傾率はアーモンドアイとリバティアイランドがほぼ同じ、ハープスターが最も高い形。しかし完歩ピッチ推移を見るとハープスターが最も頑張って前半を走っているように感じます。一定のリズムで淡々とマシンのように走っています。一方、アーモンドアイはどんどんピッチを緩めていますね。まるで長距離戦を走っているかのよう。そしてリバティアイランドはハープスター寄りですが、この2頭と比べるとスタートダッシュはあれでも頑張っている方かもしれません。3頭とも「そんなところを走って本当に勝てるのか?」みたいな位置取りという共通項がありますが三者三様の走りのメカニズム。実におもしろいです。次は後半800m。
淡々と走っていたハープスターはL500mから爆発的に一気にピッチを速めていきます。そこからひたすら頑張るのみという雰囲気。スムーズさのかけらもない、まさに暴力的な末脚。競っている状態だからこそでもありますが、ラスト100mでのもうひと踏ん張りは凄いですね。ゴール板までひたすら脚を動かし続けています。中盤ゆったりとしたリズムとなっていたアーモンドアイは徐々にピッチを速めL400~300m区間がピーク。中盤とのピッチの落差はハープスター以上でもあります。Twitter等でイクイノックスとともに何度も触れてきましたが、全開スパート時はストライドを狭め一気にピッチを速めてスピードを上げ、その後はストライドを伸ばしながらスピードを維持していくという人間ライクな走り。リバティアイランドのスパート質はアーモンドアイ寄りのタイプですが、前半の走りと合わせるとハープスターとアーモンドアイの中間に位置するようなイメージとなるでしょうか。4コーナーから多くの馬をごぼう抜きしたのは3頭同じですが、そのラストスパートでの走りもまた三者三様。各々個性的な走りを見せていました。
この3頭、あらゆるパターンに直面した際の対応力という点ではアーモンドアイが抜けていると思います。特に道中ゆったりとしたリズムで追走できる点は、長い距離への対応力にプラスとなります。アーモンドアイの父ロードカナロアはミオスタチン遺伝子CC型、ハープスターの父ディープインパクトはTT型であり、肉体的な長距離スタミナ力という点においてアーモンドアイは分が悪かったかもしれませんが、それを補うべく走りのメカニズムを有していたということになります。ハープスターは不器用なところがありましたが、そこを埋めるべく爆発的な一気のピッチアップという特徴をも持っていました。また、それを維持するべく肉体的なスタミナ力を持っていたのかもしれません。
さて、多くの方が関心を抱いているのはリバティアイランドの距離延長がどうなるかという点。前述の通りエンジンの掛かりが遅いというのは急なスピードアップが弱いという意味以上に、一気に脚を使う局面となった際の余力消耗度が大きいという点が要素としては重要な部分。2戦目のアルテミスSはゴール間際では少しバテ気味になっていたんですね。同じ展開になったとしてもアーモンドアイやハープスターならギリギリ差し届いていた可能性が高いと思います。ジェンティルドンナが勝ったオークスのような流れになるのが、おそらく最もリバティアイランドに合うシチュエーションではないかと感じます。一方、古くはシーザリオ、近年ならデアリングタクトが勝ったオークスのようなレースになると、位置取りとの相関関係があるもののリバティアイランドにとって分の悪いレースになるんじゃないかと見ています。陣営はオークスに挑むのか、あるいは他のレースに狙いを定めてくるのか注目ですね。また、6月に入れば古馬混合戦に出られるチャンスがあります。安田記念参戦も一つの手でしょう。最後になりますが昨年の安田記念の大外枠に入ったナランフレグさんには誠に申し訳ないんですが、その大外枠にリバティアイランドを当てはめたL3指数出馬表を作ってみました。対古馬4kg減となる斤量の恩恵は多大です。
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