Mahmoudの競馬エッセイ vol.022 「ソングラインの成長力」
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前回に引き続き今年の安田記念に関する続編となります。2年連続で安田記念に出走した馬は勝ったソングラインを始めとして計7頭。しかも上位3頭は前年出走組で昨年と比較するのに好条件のレースとなりました。この時期の東京競馬場は南方向からの風が多く3~4コーナーは追い風を受けることになり、1周する2400m戦等と比べ走破タイムが伸びやすい傾向にあります。スタートゲート付近の黄旗を見る限り風の影響は昨年と似た状況だったかと思われます。まずはソングライン以外の6頭の平均完歩ピッチと平均ストライド長のグラフで昨年との違いを見ていきましょう。
昨年より走破タイムを落としたナランフレグ以外の6頭は平均して0.74秒走破タイムを縮めています。この値を昨年との馬場差とするのも一つの考えですが、馬場が速ければそれだけ地面反力を受けるので必ずストライドが伸び、この6頭が昨年と同完歩ピッチで走ったのなら平均ストライド長は5.8~6.0cm伸びることとなります。しかし上記の平均ストライド長のグラフからは、中盤でストライドが伸びているものの後半、特にラスト200mのストライドが伸びていないのがイメージできるかと思います。ここで各馬のスタートからゴールまで全区間の完歩ピッチ、ストライド長の平均値を書いておきましょう。
イルーシヴパンサーはほぼ差がないものの他の5頭は2023年の方が完歩ピッチは速くなっています。そしてストライド長はカフェファラオが前述の5.8~6.0cmに近い値になっているだけで他の馬のストライド長の伸びは0.74秒馬場が速くなった相応の値ではありません。シュネルマイスターは2023年で4コーナーの外目を通っているため実質5cmほど伸びていますが、セリフォスはインを通ったため実質値はもっと少ない値となります。要は2023年ではどの馬もL1000~600mを中心に中間部分でピッチを速くしてスピードを高めたことによって余力を前年以上に消耗しラストスパートに入っています。そのため脚を使い切ってゴールしているような形となり、特にラスト200mでストライドが伸びなくなっています。2022年より2023年の方がより速い走破タイムをマークしやすいペース推移となっており、馬場差は1600m当たり0.74秒ほど差があるとは考えづらいわけです。現時点での私の判定値は前年より1600m当たり0.3秒速い馬場という位置付けにしています。
本題とは外れますがシュネルマイスターについて触れておきます。スタートダッシュではそれなりに促されていたものの前年ほどピッチは速くならず、前半400m通過は0.20秒、前半600m通過では0.35秒前年より遅くなっていました。昨年スプリンターズSに参戦して序盤から頑張らせて追走した経験値は全く生きていません。その結果、後半1000mを55.8で走破。超の文字が付くほどの高速馬場状態でなければ1600m戦の後半1000mを55秒台で走る馬はあまり見掛けません。今年のシュネルマイスターは後半良く走っているのは確かですが、勝ち負けのラインに届くことはままならず。序盤でガンガン押していけばもっと前には行けるでしょうが、イルーシヴパンサーの走行データを見ればわかるように前半頑張れば後半の走りは必ず悪くなるのでどの道厳しい戦いの場。シュネルマイスター自身のリズムで走ったのが今年の前半部分となっているので、1600m戦でのスピードレンジはシュネルマイスターにとって速すぎると考える方が筋は通ります。今年の安田記念の序盤と同じくらいのペースで走って塩梅が良くなるのは2000m戦、あるいは2400m戦。相手の力量の違いも重々踏まえてレース選択をする必要性がありますが、単に適距離を求めるのなら距離延長の方が戦いやすいでしょうし、パフォーマンスアップが見込める可能性も出てくるでしょう。
さて本題のソングライン。昨年はクビ差の勝利でしたが今年は1馬身1/4差を付ける快勝劇。平均完歩ピッチと平均ストライド長の推移を昨年と比較してみましょう。
完歩ピッチの推移を見ると他馬と同様に中盤では昨年以上にピッチを速めていますがスパート始動は100m遅くなっています。それでも全開時のピッチは昨年ほど速くなっていません。L100~0mでピッチがガクンと遅くなっている部分は後ほど触れます。そして他の6頭と大きく異なるのは平均ストライド長の推移。走行ラインは昨年とほぼ同じ。前半は2区間で前年とほぼ同じ値ですが後半800mからは昨年より一段とストライドが伸びています。ここで全区間の平均値を他の6頭と並べてみましょう。
完歩ピッチの平均値はほぼイコール。ストライド長の平均値は7.4cm上昇。1600m当たり0.74秒速い馬場の際に伸びるストライド長の5.8~6.0cmを超えています。前年以上のパフォーマンスとなったのは紛れもない事実で見事な走りでした。競走馬は各々固有のピッチレンジを持っており、大多数の馬はキャリアを積んだところで持ち前のピッチレンジが速くなることはありません。ごく例外として挙げられるのはソングラインの父キズナ。3歳春まではピッチを速くしてラストスパートを行うことが難しい状態でしたが、3歳秋の欧州遠征を経て筋肉量が増えたせいなのか、4歳になってからはピッチを速めてスパートできるキレ味が宿っていました。しかしソングラインは前述のようにピッチが速くなってパフォーマンスアップしたわけではなくストライドが伸びてパフォーマンスアップした形。地面を蹴る力がたくましくなったと考えるのも一つの手ですが、そもそも100~200mを上手く助走してラスト600mを全開で走れば今回のメンバー全頭は600mを32秒以下で走る走力があります。今回のソングラインは後半600mまで58.5程度で走っていましたが、それくらいのラップタイムで走ってもこれだけストライドを伸ばしてラスト600mを32.9程度で走れる余力が十分備わっていたと考えるのが妥当かと考えます。5歳となった今、さらに強くなっているのが素晴らしいところですね。またL100~0mでピッチがガクッと遅くなっている件については昨年のレース映像と比較してみればイメージが掴めるかと思います。内の先行2頭を交わした残り100m辺りから首を上げたまま走り続けるようになりました。もちろん100%ギリギリで走っているのでバテ始めていたのは確かですが、このラスト100mはソラを使っていますね。鞍上は戸崎圭太騎手ですから早々と勝ちを確信していたことでしょうし、早い段階から流すようにゴールインしておかしくないジョッキーのはずですが、先頭になった後も追い続け最後の6完歩目でもムチを入れていました。気を抜き始めたのをすぐに察知して残り40mくらいまでしっかり追っていましたね。着差以上の完勝とみて良いでしょう。
最後に指数データを用いてソングラインの変遷と過去の安田記念の勝ち馬と比較してみたいと思います。
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