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Mahmoudの競馬エッセイ vol.032 「2023凱旋門賞展望その2」

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Mahmoud
2023/9/20 23:41
今回は凱旋門賞の最重要プレップレースとなるケースの多い愛チャンピオンSを振り返ってみましょう。今年逃げて2着となったLuxembourgは昨年の同レースを道中4番手から差し切り勝ち。昨年の勝ちタイムは2:12.10で今年は2:02.68。時計的には全く質の違うレースでもありました。まずはこのLuxembourgの完歩ピッチの推移を比較してみます。
今年は逃げたので序盤のピッチが速くなるのは当然なのですが、前半だけでなく後半も終始今年の方がピッチは速いです。馬が入れ替わったんじゃないか?というくらい衝撃的な違い。今年のLuxembourg自身の前後半は前半を1.2秒マイナスした日本式で61.04-60.53。昨年は67.0-63.9。ペースバランスはまるで違うレースでした。じゃあ何故、前半ピッチを速めたのに後半も昨年以上のピッチで走り抜けたのか、それはおそらく馬場の問題。昨年の同レースで3着だったVadeniが次走極悪馬場の凱旋門賞で2着に来てはいるものの、昨年はペースが緩かったのにトラクションの効かない馬場に余力を削られた馬が多かったと推測しています。道悪馬場で活躍する馬が多い欧州馬といえども、トラクションが効きやすい馬場の方が走りやすいのが大多数ではないかと思っています。名手R.ムーア騎手鞍上であっても昨年の前半部分はピッチがかなり上下動しているように、ペース的にLuxembourgは上手に走れていませんでした。それでも差し切れたのは他馬も同様に良いパフォーマンスで走れなかったのが理由ではないかと思います。また、重馬場だとピッチ走法が有利とか、馬場が悪いとピッチ走法に移行するという言説がありますが、昨年のLuxembourgのピッチレンジは遅いです。そんな言説に信憑性は全くありません。
海外のレース映像は各カメラの同期がバラバラでデータを採るのに非常に難儀します。愛チャンピオンSでのAuguste Rodinの完歩ピッチをPostしましたが、その後精査し修正しました。道中はスムーズに走れています。それでは上位4頭の前半600mの完歩ピッチをご覧ください。
中段から後方に待機した4King of Steel3Nashwaはテンでピッチを速めてダッシュさせていません。ここが中・長距離戦での日本競馬と欧州競馬で最も異なる部分。日本競馬は緩急がもっと大きいです。どちらが折り合いに苦労しそうか容易く想像できるかと思います。次は後半1400mの完歩ピッチ推移。
L1200900mにかけて、道中6番手を進んだKing of Steelのピッチが遅くなる様はLuxembourgAuguste Rodinの先行2頭と比べると大きいです。45番手の馬に合わせた可能性もありますが、ここで先行2頭との差が広がりました。その後、900800m区間でピッチを速めて前を追っかけている様子が伺えます。そして追い付いたところで再度ピッチを遅めL600500mで一気のスパート。英ダービーと良く似た形となりました。このレース後鞍上K.ストット騎手は主戦契約を打ち切られたそうで、おそらく他のレースも含め結果のみで判断されたことだろうと思いますが、このようなデータ的にもロスの多い走りをさせていました。また、位置取り的にNashwaもこのKing of Steelの影響を受けたのは確かでしたが、Nashwa自身の完歩ピッチの上下動も激しいですね。鞍上H.ドイル騎手は昨年短期免許で来日。馬質に少々恵まれていなかったところがありましたが上げた成績は今一つの内容。彼女は馬への当たりが強いんですね。緩急の大きいレースに馴染んでいる日本馬は反応が相対的に敏感で、H.ドイル騎手とは相性が良くなかったケースが多かっただろうと思われます。今年も来日するそうですが、例えば反応が敏感ではないタイプの馬なら相性は悪くないと考えられます。日本が誇るC.ルメール騎手と川田将雅騎手なら、このNashwaKing of Steelのような完歩ピッチ推移で走らせることはほぼ皆無であり、道中意味もなく間隔を空けたりせず至ってスムーズな追走をさせるはず。そしてもっと滑らかなラストスパートを敢行し、ソラを使ったAuguste Rodinにグッと迫れるレースができた可能性は大きいと感じます。
さて問題のAuguste Rodin。改めてキングジョージⅥ&QESと前半1000mの完歩ピッチを比較してみましょう。
愛チャンピオンSでは2番手、キングジョージⅥ&QESでは78番手で追走。前半300mまではキングジョージⅥ&QESより踏み込んでダッシュしていきましたが、その後はしっかりとピッチを遅くできています。少しの差ではあるのですが意味合いとして実は結構大きく、ペースの違い以上にさらなる大きな理由があります。そしてそれと同じ理由だったのが明白に感じられる馬がいます。こちらをご覧ください。
ドウデュースはニエル賞こそ欧州的な序盤のピッチ推移となったので何とかレースの体にはなりました。端的に言えば中盤でペースが緩まなかったのが敗因でしたが凱旋門賞では前半300mから日本ダービーよりピッチが速くなっています。しかも700800mでは一段ピッチレンジが速くなっています。速い流れとなった日本ダービーは後方5番手辺りで追走していましたが、この凱旋門賞ではもう一段後ろの位置取り。ドウデュースはピッチを緩めて追走できなかったんですね。それで余力を早々と失いレース中盤から付いていけなくなったのですが、極悪馬場に対する適性が乏しいため、過剰に脚を回転させなければならなかったのがまるでレースにならなかった最大要因です。キングジョージⅥ&QESでのAuguste Rodinも同様に悪化した馬場状態ではピッチを緩めて追走できる余裕がなく中盤まで走らざるを得なかったということ。馬場適性というのは各々の馬場状態においてスピードが相対的に出ているかどうかと見るのが一般的ですが、余力を消耗しやすいかどうかと見るのも大事な視点。当然比較するのに値する他の走行例が必要ですが、そういったレースを並べることができれば完歩ピッチの推移で判断が付きます。勝った負けたという最終的な結果より絶対的な馬場適性というのをあぶりだすことが可能となります。
トラクションが効く馬場状態だった愛チャンピオンSでは、距離が少し短いとかペースがちょっと速いのではないかと私は心配しましたが、何のことはなく良い走りをしていたと思います。そして愛ダービーと似た形で今回は残り200mからピッチが一気に遅くなってしまいました。これはさすがにソラを使った典型例でしょう。改めて英ダービー、愛ダービーと完歩ピッチの推移を比較してみます。
今回は10F戦らしい中盤の流れだったので愛ダービーほどピッチを速めてラストスパートしていないのは当然としても、英ダービーのように600mにわたってしぶとく伸び続けるようなイメージのピッチ推移ではありません。L200mからのピッチが遅くなった度合いはかなり大きく、自ら制御していると考えるのが妥当でしょう。英ダービーは前を行くKing of Steelを追い続ける展開。愛ダービーと愛チャンピオンSは早めに先頭に立つ展開。いかにもソラを使いやすそうな状況下でもありました。父ディープインパクトはストライドをよく伸ばし続けてラストスパートを行うイメージが強いのですが、引退レースとなった2006有馬記念などいくつかのレースでは、一気にピッチを速めて超瞬発力で勝負を決定づけてもいました。あっさりと勝負を決めてしまった際は鞍上武豊騎手の指示に従い性能の高いブレーキング能力をも見せており、今回のAuguste Rodinは僅差だったのでゴールまで懸命に追われ続けていたものの、馬自身は父と同じように緩めてゴールインしたかったのかもしれません。内容としては着差以上の完勝だったとみて良いでしょう。
Auguste Rodinの次走は米ブリーダーズカップ参戦とのこと。おそらくターフに出てくると思いますが、今年の開催地サンタアニタパーク競馬場の芝12F戦はバックストレッチの向こう側にある引き込み線からのスタートとなり、他のアメリカの芝12F戦とは違うコース形態となっています。同コースでは2012年に日本馬トレイルブレイザーが参戦し勝ち馬から約0.4秒差、2:23.25辺りの走破タイムで4着。このトレイルブレイザーの走行データを日本のレースと比較してサンタアニタパーク競馬場芝12F戦「ヒルサイドコース」を少しだけですが解説しておきます。

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