2020年産馬クラシックロード vol.019
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今年の皐月賞は出走馬18頭のちょうど中間に位置するあたりの馬で前半1000m通過が60.2程度。それを基準とすると後半1000mは60.4。同じように中間位置馬で見るなら58.9-59.1程度だったロゴタイプが勝った2013年と並んで、ここ20年でペースバランスとしては最も前掛かりのレースになりました。例えば前後半60.3-60.3で走ったらイーブンペースという解釈がされがちですが、中山芝2000mなら後半速いのが実質のイーブンペース。走破タイム2:00.6なら60.9-59.7辺りが実質的なイーブンペースとなります。今回相当な前掛かりの流れになった要因を探ってみましょう。まずはハナに立ったグラニットの前半400mでの平均完歩ピッチを前走スプリングSと比較してみます。
前走中山芝1800m戦スプリングSはスタートから200mで1コーナーに突入。スタートダッシュを決めればマイペースで逃げやすいコース形態。その1コーナーに入るまでの距離が200m伸びると、メリットとしては400mの距離を使って逃げる態勢を作れるという距離的猶予、時間的猶予がある一方、他馬もしっかりダッシュしてくるとペースを落ち着かせるまで時間が掛かってしまうデメリットもあります。外目の13番枠からの発走だったグラニットは内枠勢数頭がかなりスタートダッシュを効かせたため前半400mは前走より大きな負荷を強いられる形となりました。この中山芝2000m戦で中山芝1800m戦と同等のレベルで残り1000mまで走るためには1800m戦より200m平均0.07秒ほど遅いペースで走らなければなりません。実際にこれだけ前走以上にピッチを速めて400mを走ることになったわけですから、1コーナーに入ればグッとペースを落とす必要に迫られます。次は2コーナー半ば、前半700m=L1300mまでを前走と比較してみます。ここからのグラフはゴールに合わせて残り距離を同じにしているので、コーナー区間は前走と同じように比較してOKです。
1コーナーから2コーナーにかけて、グラニットは前走よりしっかりピッチを遅くして走れています。前半400mでの過剰な負荷を帳消しできるかもしれないピッチ推移となっています。これは序盤2番手を走っていたベラジオオペラも同様です。
思いっきりスタートダッシュさせているところは賛否あるかもしれませんが、1コーナーに入った前半400m=L1600mからはピッチを遅くできています。このままいけばグラニットのマイペースという流れになった可能性があったのですが、その空気感を一変させたのがタッチウッドでした。次は3コーナー入口L800mまでのグラニットのグラフを見てください。
逃げ馬が後続馬にプレッシャーを掛けられ、馬自身がピッチを速めてペースアップしていくシーンはよく見られますが、今回のグラニットは違います。緑丸のL1400~1300mまで徐々にピッチを緩めた後、タッチウッドが外から徐々に迫ってくるのに合わせて鞍上嶋田純次騎手が促してペースアップさせているんですね。直線部分ならまだしも、まだ2コーナーの段階なので外から交わされることはそうそうないんですが、塩梅良いペースで逃げることより、とにかくハナに立ち続けるというのがプライオリティのトップだったのでしょう。これで予定調和が崩れて紛れが起こりました。具体的にはグラニットとその真後ろを進んでいたグリューネグリーンとの間隔が開いていったんですね。ここがペース推移のハイライトシーン。それではL800mまでのグラニット、グリューネグリーン、ベラジオオペラの完歩ピッチの推移をご覧ください。
過去走でも先行力を見せていたグリューネグリーンは2コーナーをクリアしたL1100mから少しピッチを速めるだけで前方のグラニットとの差を詰めていきました。その動きに合わせたのがベラジオオペラ。しかしこの馬だけは大きくピッチを速めていくこととなり、タッチウッドに迫られて促されたグラニットよりも負荷は断然大きかったと考えられます。またベラジオオペラがL1400~1300mで一旦ピッチが速くなっているのは外からタッチウッドが交わしていった区間。ここは馬自身が掛かった状態だったとは思いますが、レース中盤までこれほどピッチが上下する走りとなってしまうと、よほど力が抜けていない限り好走するのは不可能と言えます。この辺りは乗り替わりによる難しさが如実に現れた結果だったかと思います。先行勢のこの状況により、中団から後方に位置していた馬たちも中盤で脚をじっくり溜められる余裕はなかったことでしょう。現3歳中距離路線ではグラニットが逃げたスプリングS以外、どのレースもスローの流れで前哨戦の比較では皐月賞史上最も遅いペースの経験値しかない馬が揃った一戦でしたが、本番では一転、多くの馬が経験値を遥かに超える追走ペースとなったのは意外でもあり、馬と人の組み合わせ次第ではレースペースはいかようにもなるという実例だったかと思います。しかし、結局は馬の実力と、各々の馬に見合ったスムーズなレースができた馬は上位に来るということ。上位3頭とベラジオオペラの全区間の完歩ピッチがこちら。
ベラジオオペラのピッチがL600~500mで遅くなっているのは2完歩だけでしたが逆手前になった影響です。外に膨れたシーンがそれです。またタッチウッドも残り450m辺りから逆手前に替えそのまま19完歩使って4コーナーをクリア。2頭とも苦しくて手前を替えたかったのかもしれません。ソールオリエンスの逆手前コーナー走りとは意味合いが大きく異なることでしょう。さて、追走に苦しんだところがありましたが、ファントムシーフの前半でのスムーズさは光ります。さすがC.ルメール騎手という騎乗ぶり。いつもこんな感じで乗っています。タスティエーラは直前追い切りで抑えきれない走りとなり心配された方がいたことでしょうが、1週前追い切りでは松山弘平が跨りスムーズな走りを見せていました。実際のレースでもタッチウッドに交わされたシーンは掛かりそうなところを懸命に御していましたね。いいレースをさせていたと思います。ソールオリエンスは中盤のピッチが平坦気味に推移しているのは追走に苦労していた証拠。後方とはいえじっくり脚を溜めていたわけではありません。それでもあの末脚の爆発力ということです。無料部分の最後には4着メタルスピードの前走との比較を見てもらいましょう。
施行距離が伸びて全体的にピッチが遅くなっているのは仕方がない部分ですが、3着に食い込んだスプリングSをトレースしているかのような走り。特にラストスパートはそっくりで仕掛けのタイミングは絶妙。きっちり脚を使い切った鞍上津村明秀騎手の過去走と線で繋いだメタルスピードのストロングポイントを発揮させる素晴らしい好騎乗だったと思います。もし私がメタルスピードの馬主だったら、いいレースをしてくれたと思うのは当然として、この走りの分析からすると大絶賛する気持ちになるのは必至ですね。前半の脚の使い方と後半のそれとのトレードオフの関係性を、メタルスピードの特性にアジャストさせた会心のレースだったと言えます。3コーナーの入り口ではタスティエーラ・メタルスピード・ファントムシーフが外目のライン上で一直線の隊列になっていました。その隊列は4コーナーをクリアするまで乱れることはなく、結果的にその3頭が上位争いを演じました。「乗り替わりによる難しさ」と先ほど述べましたが、じゃあ継続騎乗なら問題ないのかというわけではなく、この3頭、特にメタルスピードのようなレースをさせてこそ継続騎乗の価値が成り立つのだと思います。
他馬についてもこの後触れていきますが、後日追記する形で書いていきます。
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