2021年産馬クラシックロード vol.077
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今年の日本ダービーの上位5頭の振り返りを行っていきます。私はいわゆるレースラップタイムを重視することは基本ありませんがレース質の目安になることはわかります。昨年と比較すれば今年がどんなレースだったのかイメージできると思いますが、昨年はパクスオトマニカが中盤から後続を離して逃げてしまったので、1着から約0.2秒差の6着となった道中2番手を進んだホウオウビスケッツが先頭だったと仮定して比べてみましょう。
2024年は1コーナー前半400mから2023年より遅くなり前半1000m通過は最大差となる1.1秒遅れ。しかしそこから徐々に速くなり前半1600m=残り800m地点では2024年が0.35秒先行。細かな馬場差はさておき風の影響はともに強めの南風を受け1~2コーナーが向かい風、3~4コーナーが追い風という似た状況。どちらもスローの流れだったのは共通事項ですがレース後半のシビアさは2024年が上ですね。次は上位5頭の個別ラップタイムを見ていきましょう。
1着ダノンデサイルが2:24.30ちょうどで入線したと仮定すると2着ジャスティンミラノ以下の入線タイムはこの通り。公式値では3着シンエンペラーと4、5着のサンライズアースおよびレガレイラとは0.1秒差となっていますが、実際には0.2秒差近くありました。後半1000m最速は先行して勝利したダノンデサイルの56.50。中団、後方から差してきたシンエンペラーやレガレイラより速いラップタイムをマークしているので、ダノンデサイルはまさに完勝という形でした。全く異なるレース質にでもならない限り他馬の逆転は難しかったと考えるのが妥当なところかと思います。次はこの上位5頭の平均完歩ピッチ推移を見ていきましょう。まずは前半1200mから。
戦前上記のようなピッチ表をPostしましたがダノンデサイルは上位5頭の中では最も速いピッチでスタートダッシュ。しかし道中はストライドを大きく取り追走するのがダノンデサイルの特徴の一つ。完歩ピッチの緩急の差が大きく一見果たして効率の良い走りなのかと疑問形で見てしまいがちですが、L1700~1600mを頂点とした完歩ピッチを緩めていく過程のスムーズさはこの5頭の中で際立っています。セイウンスカイに騎乗した1998年京都大賞典、菊花賞が代表されるようにダノンデサイルの鞍上横山典弘騎手は緩急を付けた逃げの技術力が他の騎手を圧倒しており、どんどんペースダウンしていく過程で各馬折り合いに苦労の様子が見られる中、このダノンデサイルとのコンビはダントツでスムーズにペースダウンが図られていました。見た目は懸命に抑え込もうとしている姿に映りましたがその実態はこれです。騎手の挙動が全てではなく競走馬の挙動が全てなのです。2着ジャスティンミラノはL2100~2000m=前半300~400mで若干完歩ピッチが前の区間より速くなっています。内にいたシュガークンと競るような形になった影響かと思われますが、前走皐月賞でしっかり出していった影響もあったことでしょう。勝敗を決する要因とまではならないと思われますがダノンデサイルとは対照的な部分です。ジャスティンミラノと比較的近いのが3着シンエンペラー。押してスタートダッシュさせていたのでこうなるのも仕方がありません。4着サンライズアースは初めから位置を取りにいく気持ちはなかったのでしょう。L2000~1900mは若干完歩ピッチが速くなっていますが概ね負荷を掛けずに序盤を入っています。欧州12F路線ではこのような序盤の走り方が多かったりします。5着レガレイラは鞍上C.ルメール騎手が好位置に付けられないものかとチャレンジしていましたが、ゼロ発進能力が弱いので難しい。ダノンデサイルに次いで序盤スムーズに走れています。
さて、この前半部分での注目点はL1600m以降。そのL1600m地点から後方2番手にいたコスモキュランダが押し上げて行き、それに最後方サンライズアースが付いて行く形に。馬群全体のペースも押し上げられ各馬完歩ピッチが速くなっていきます。その中でジャスティンミラノは僅かに速くなるくらいで、ここでの局面への対応力は群を抜いているというか、己のリズムは乱さない走りをしていました。そしてL1200m地点ではレガレイラを交わしていたサンライズアースもグングン押し上げて行ったようにはあまり感じられない波形となっています。次は後半1200m。
3コーナーL1000m地点では大外から3番手辺りまで押し上げていたサンライズアースはその後先頭に出るためピッチを速めていますが、それまでの過程がじわじわとピッチを速めているだけで、見た目で大きく位置取りが変わったイメージとは異なる走行データ。道中で押し上げるシーンは時々見られますが、その多くの場合はガツンとピッチを速めさせて押し上げるパターン。鞍上池添謙一騎手は実戦で初めての騎乗となりましたがサンライズアースを思うがまま完全に御しています。もう少しで3着入線となるほどの好内容の走りの背景には、このようなスムーズな押し上げという形がありました。走行データを採っていて久々に「おお、凄いな」と思わせてくれる見事な技術力。今回のような走らせ方はW.ビュイック騎手鞍上だった5歳になってからのGhaiyyathと根っこが似ていますね。
最速完歩ピッチ区間が最もゴール寄りになっているのがダノンデサイル。勝った馬というのはほとんどのケースで理想的な走りをしています。しかし最もゴールから遠い地点が最速完歩ピッチ区間となったレガレイラと個別ラップタイムを比較すると、ラスト200mでの失速率はダノンデサイルの方が大きいです。先にピークを迎えた方が逆に終盤しっかり脚を使えているというのは、各競走馬の走りの質の違いによってもたらされているという即面があります。この5頭の平均ストライド長のグラフも掲載しておくので、走りの質の違いという部分をイメージできるかもしれません。
次はダノンデサイルの前走京成杯との比較。
施行距離が400m違うので日本ダービーの方が前半完歩ピッチの波形が上にあるのは当然としても、距離を考慮してもなお日本ダービーは緩い流れだったことが伺えます。その分、後半での完歩ピッチの値は早い段階から速くなっています。前述のようにダノンデサイルは日本ダービー上位組の中で全開区間が最もゴール寄りだったものの、完歩ピッチの値の上下幅が最も大きいように走りの質としては瞬発力型と考えられます。後方からロングスプリント戦で戦うよりも今回のように好位置に付けて戦うのが理に適っています。
2着ジャスティンミラノについては改めて皐月賞上位6頭の完歩ピッチ推移を見てみましょう。
鞍上戸崎圭太騎手の挙動を見れば仕掛けが早いと言われるのは無理もありませんが、ジャスティンミラノの全開区間は他馬とまるで異なるL200~100m区間。端的に言えばジャスティンミラノは他馬が苦しくなった頃にようやく本気を出したということ。鞍上の挙動とは裏腹にジャスティンミラノ自身の仕掛けのタイミングは最も遅かったわけで、だからこそ残り200mからの強靭な走りで勝利を掴み取ったわけです。このジャスティンミラノ全4戦の平均完歩ピッチ推移を前後半分けて見てみましょう。
皐月賞と比べれば中盤ゆっくり走れたわけで、それを担保に後半早めの踏み出しとなって当然ではあるのですが、結果論的には今回の日本ダービーこそ仕掛けがちょっと早かったという走行データとなっていました。そもそも皐月賞が全く論理的ではなく非常識な走りだったので、何故あのような形になったのかずっと考えていましたが、落としどころとしては左後方からコスモキュランダが並び掛けたことにより闘志に火が付いたということかと私なりに結論付けていました。この日本ダービーでは抜け出しに掛ったダノンデサイルとの間にはエコロヴァルツとシュガークンが居て、ダノンデサイルと併せる状態にならなかったのが皐月賞と異なる点だったという印象です。もっとも併せられたのならダノンデサイルに負けなかったというのはさすがに論理が飛躍し過ぎており、いずれにせよ分の悪い戦いだったとは思いますが3着以降とは一定の差を築いており内容としては悪くなかったと思います。できるならこの後は宝塚記念に挑んで欲しいところ。エイジアローワンスが5kgあるので対古馬では断然有利な存在になるかと思います。
次はシンエンペラーについてホープフルS、皐月賞と比べてみましょう。
全開時の平均完歩ピッチが0.418秒/完歩まで速くなったのにはビックリ。計測ミスかと思ったくらいで過去最速は新馬での0.427秒/完歩が最速。またバックストレッチで200m12.6~12.7のラップタイムで走っていた際の平均完歩は0.464秒/完歩。このピッチレベルだと新馬では200m12.4、皐月賞では11.9程度で走っており、今回の日本ダービーでは総じて速いピッチ=ストライドが狭く走っていました。何故こうなったかは全く不明でこのような過去例も記憶にありません。シンエンペラーにとってピッチを遅くしてストライドを伸ばして走るより今回のようにピッチを速くしてストライドを狭めて走る方が、余力残存度が大きくなるならそれはそれで良いこと。2000m戦より2400m戦の方が適性はあると見ても良さそうな内容であり、今まで絶対的スピード値の差で勝ち切れなかった点からも平均スピードが遅くなる2400m戦で良さが出たと言えそうです。凱旋門賞に挑戦するということなので是非頑張って欲しいですしロンシャン芝2400mに合いそうだも思います。後は値にしっかり現れているので一点だけ。今回L300~200mでピッチが遅くなった後、進路が狭くなった様子もさほど感じられないままL200~100mで再度速くなっています。鞍上坂井瑠星騎手の大きなアクションで追われた馬は、このようにピッチのリズムが乱れるケースが時々見られます。少々雑に乗られてもあまりパフォーマンスに影響が出なさそうなシンエンペラーですが、L1600m=前半800mまでのピッチの滑らかさも良くありません。手綱から伝わる騎手の指示通りに競走馬はピッチを変化していくのでダノンデサイルのように滑らかに操縦された馬はキレイな完歩ピッチの波形を描いていきます。この辺りを改善していけばパフォーマンスをもう少し上げられる可能性が高まることでしょう。
最後にレガレイラもシンエンペラーと同様のレースで比較してみましょう。
序盤ペースが緩く余力温存度が高くなった影響で後半ロングスプリントを行っており、その走りの質は皐月賞より良い内容でしょう。しかし皐月賞以上の差をシンエンペラーに付けられてしまいました。少なくとも僅差に迫るくらいで入線して欲しかったのが正直なところです。シンエンペラーもそうですが絶対的スピードがちょっと足らないイメージであり、それはスタートダッシュ時にも現れていてゼロ発進能力が弱いですね。これはトルクに結びつくような筋力が弱いのが要因かと思え、新馬時にも想像していましたがミオスタチン遺伝子TT型に出ているのではないか、即ちもう少し距離が欲しいタイプかもしれません。こういった部分は悲観的に捉える必要性は全くなくて、レース経験を積み重ねることにより追走力が高まっていけば、もう少し早く始動する、あるいはペースがもう少し速くなっても同様のロングスプリントが可能となってくるわけです。同じ2400m戦でも日本の馬場より欧州の馬場の方が合うと私は見ていて、皐月賞と日本ダービーで敗戦となってもシンエンペラーと同じように凱旋門賞に向かう価値は十分あると考えています。
まだ暫定値ではありますがレース結果L5指数明細表を掲載しておきます。指数は低いもののL5指数プラス20オーバーが4頭で全頭プラス10オーバー。まずまずの内容だったかと思われます。
この後は今週のオープンクラス特別登録馬の指数表を掲載しておきます。
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