BOOKERS

image

ファミコン互換機の製造数は? 「HKC」編【第13回】

0
image
Unauthorizon
2025/12/5 23:15

ファミコン互換機を巡る大いなる謎、「互換機はどれくらいの数が作られたのか?」に迫る。引き続き「歴史的重要度の高い小規模メーカー」編です。今回取り上げる「HKC」こと豪康電子工業有限公司は、台湾におけるファミコン互換機産業の最後期まで生き残ったメーカーのひとつ。その実態はどのようなものだったのでしょうか。

知名度は低いながらも

豪康電子工業有限公司(HKC Electron)は、これまで本連載が取り扱ってきた台湾ファミコン互換機メーカーの中で最も知名度が低いと思われます。1991年10月起業の後発組だったことに加え、関連情報もあまり残っておらず、製品デザイン面でもマーケットシェア面でも目立った存在ではありませんでした。しかし逆にいえば、突出したところがないからこそ「平均的な小規模メーカー像」を捉えるには格好の研究材料であるともいえます。そんなわけで今回は、あえてこの無名の小規模メーカーにスポットを当ててみます。

経営に関する唯一の情報源

「HKC」というのは「豪康」をローマ字読みした「Hao Kang」に「Corporation」を繋げて、短縮したものと考えられます。豪康電子工業はこのブランド名のもと、各種互換機や周辺機器を展開していました。
創業者は李錦融なる人物ですが、彼の出自や創業の経緯を含め、会社の実態については何も分かっていません。経営状況について唯一の情報源となるのは、前回も参照した「港台游戏机厂家概况」『电子天府』1994 Vol.1 [2月号] pp.118~119)だけです。
これによると同社の1992年時点で売上高は120万USドル。製品の40%は輸出用で、主要な出荷先は中東、欧州、南アフリカ。次いで南米だったということです。
売上高120万USドルは、同時期の任天堂電子(NTDEC)の6割に相当します。もっとも豪康電子工業がゲーム機ハード主体であるのに対し、任天堂電子は海賊版ソフト主体だったので、製造台数を導き出すうえでの直接的な手がかりとしては使えません。

Super Giant/超級神童

豪康電子工業は「Super Giant」や「超級神童」の製品名でファミコン互換機を発売していました。機種は基本的に以下のふたつだけです。
ファミコン模倣型(HK-380系列)
AV端子、連射ボタンを備えた、当時のごく標準的なスタイルのファミコン模倣型。前出「港台游戏机厂家概况」はこれを同社の主要製品あるとしています。
HK-380Wは無線RF出力用のアンテナを同梱。
上写真のようにノーブランドで流通した製品も多数存在する。
独自型(HK-480/486/686系列)
当時「小天才」シリーズの最新機種だったIQ-1000から如実に影響を受けていますが、一応は豪康電子工業の独自デザイン。ワイヤレスコントローラー標準対応なのもIQ-1000譲り。それ以外に機能面で目立った特色はありません。
HK-486は通常コントローラ同梱モデル。資料出典: Ness Dark @Facebook
HK-480XやHK-686はワイヤレスコントローラ同梱モデルとなっている。
同社は後にメガドライブ互換機やゲームボーイ互換機も発売していますが、いずれも現存品はごく少数しか確認されておらず、出荷台数はあまり多くなかったと見られます。「港台游戏机厂家概况」は同社の主力商品としてメガドライブ互換機(HK-986)も挙げていますが、ちょうどその頃に絶賛売り出し中だったのでしょう。
HK-986型メガドライブ互換機。同型でパッドのデザインが異なるHK-110も存在する。
HK-1000型ゲームボーイ互換機。

シリアルナンバーの読み解き方

機種数が少ないにもかかわらず、豪康電子工業のシリアルナンバーはなかなかに難解です。

この続き: 2,665文字 画像5枚
記事のみで購入
¥2,000
定期購読マガジンで購入
¥500/月
アノウソライズン~非公認ゲーム互換機の世界~
¥500/月

パチファミをはじめとする非公認ゲーム互換機をまじめに研究。あなたの知らない世界のファミコン互換機事情をまとめています。


Flag

記事を気に入ったらサポートしよう!

image
Unauthorizon
ファミコン互換機等の非公認互換ゲーム機に特化した巨大データベース「アノウソライズン」( https://www.unauthorizon.org )に関連する様々な統計、分析、雑学などをまとめたコラムを提供します。月一回程度更新。※有料記事は月額マガジン(¥500)でのご購読がお得です。
XHomepage