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ファミコン互換機の製造数は? 「Good Boy」編【第11回】

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Unauthorizon
2025/9/3 15:46

ファミコン互換機を巡る大いなる謎、「互換機はどれくらいの数が作られたのか?」に迫る。連載第11回となる今回は引き続き中規模メーカー編。「Good Boy」こと正惠實業/光特電子に光を当てます。比較的後発ながらその製品は世界各地に広まり、一部市場では大手メーカーを凌ぐほど健闘しました。

Good Boyもまた、初期のファミコン互換機を漁っているとよく出くわす機種のひとつです。出荷量ではさすがに小天才、勝天、創造者……といった大手には遠く及びませんが、分布域の広さではこれら大手にも引けを取らず、その面でインパクトのある存在です。さまざまな国と地域で出回りましたが、特に韓国での需要が大きかったことが知られています。

初期の製造元・正惠實業

そんなGood Boyですが、成立の経緯やメーカーの素性に関してはほとんど何も知られていません。筆者が調べたところでは、最初期モデルであるGB-300SE型は正惠實業有限公司という会社が1989年3月10日に本体デザインを意匠登録しているので、その頃に発売されたものと見られます。
同社は1980年設立の電子機器メーカーで、「Maxsonic」などのブランドで主にカセットテーププレイヤーやラジオなどを発売していました(日本音響電気の同名ブランドとは無関係)。どういう流れでファミコン互換機に手を伸ばしたのかは分かりませんが、たとえば初期「小天才」の販売元である大仁電子なども元はオーディオメーカーでしたし、「Songtly」の開発責任者もオーディオ技術畑の出身でした。その方面の企業にとってファミコン互換機の製造は進出しやすい事業のひとつだったのかもしれません。
GB-300SEの登録意匠。実際の製品は黒色だが、開発段階ではファミコンと同色でデザインされていたようだ。当初のデザインコンセプトは「流線型のファミコン」だったのだろう。[画像出典] 經濟部智慧財產局 全球專利檢索系統(登録番号:132812)

光特電子への権利譲渡

しかし正惠實業はわずか1年ちょっとでGB-300SE型の意匠権を手放し、1990年12月に光特電子股份有限公司という企業に譲っています。
正惠實業と光特電子が具体的にどのような関係にあったのか、正確には分かりません。しかし光特電子が設立されたのはちょうどGB-300SEのデザイン意匠が登録される数週間前(1989年2月20日)のことで、その業務内容は最初からビデオゲーム製造販売に特化していました。GB-300SEの意匠登録と、その製造を担った会社の設立が、たまたま同時期だったというのは考えにくいところです。おそらく両社には最初から資本関係があったのでしょう。
製品版GB-300SE。このパッケージのものは主にアジア~欧州市場で出回った。

段階的な権利集約

正惠實業から光特電子にGB-300SEの意匠が移動する数ヶ月前(1990年8月)には、光特電子の創業者である謝紀文が「Good Boy」の商標を取得してもいます。まず商標、次に意匠と、漸進的に権利の移行が進められた様子がうかがえます。筆者はこれを踏まえて次のような時系列を推定しました。
  • 正惠實業はファミコン互換機を発売するにあたり、まずその製造を担う系列会社として光特電子を立ち上げた。
  • 当初は正惠實業がその経営を管理していたが、ビデオゲーム製造が順調に拡大していったため、商標登録の必要が認識されるようになった。そしてその登録を光特電子に委ねた。
  • 意匠と商標を別々の会社で管理しているとライセンスの管理などで面倒が生じるため、続いて意匠権を光特電子に移管。Good Boyに関する知財権を光特電子に集約させた。
このように考えれば、すべて辻褄が合います。

Good Boyシリーズの新展開

光特電子に権利が移転した直後から、Good Boyシリーズの販売展開は多様化していきます。この頃から同社は「GB Turtle」や「Super Boy」といった新商標の登録を次々と行ういっぽうで、新型機種の開発にも着手しています。
GB-300SEの後継、GB-MX0001。形状も性能もそれほど大きく進化していないが、フロントパネルから内部構造が透けて見える作りが印象的。ワイヤレスコントローラが付属するモデルもある。

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