Mahmoudの競馬エッセイ vol.008 「2023年サウジカップを振り返ってみよう」
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今回はパンサラッサが見事に勝利した2023年サウジカップを振り返ってみたいと思いますが、本来ならレース直後にやるべく内容です。遅くなった要因はヤル気の問題(笑)。というか、海外のレース映像は各カメラの同期が全く取れていなくて大変なんです。JRAのレースでは固定カメラ映像各々の同期は基本しっかりできていますね。ちなみに東京芝2000m戦のスタート時の映像がゲート正面方向からとなったのは2013年の天皇賞・秋くらいからだったと思いますが、その頃は0.4秒ほど遅れて映像が流れていたので正面スタンドから撮影される通常カメラに切り替わった際、その0.4秒つまり1完歩分、映像が欠損している状態でした。現在は全く問題ありませんが、それでも特殊な状況の映像では遅延が発生しています。折角なのでいくつか書いておきましょう。
バーチャルライン入り映像
G1レースが行われる日には最後の直線の馬場上に「300m」といったバーチャルラインが引かれる映像がありますが、この映像は0.1秒遅れています。東京競馬場だとその映像のままゴール入線するので違和感はありませんが、中山競馬場だと残り150mほどからゴール入線まで、通常のタイミングとなる映像に切り替わるので0.1秒映像が欠損するんですね。例えば昨年の有馬記念、勝ったイクイノックスの走りのリズムに注視しながらレース映像を改めて見てください。画面が切り替わった瞬間走りのリズムが乱れるように感じるはずです。
G1レースが行われる日には最後の直線の馬場上に「300m」といったバーチャルラインが引かれる映像がありますが、この映像は0.1秒遅れています。東京競馬場だとその映像のままゴール入線するので違和感はありませんが、中山競馬場だと残り150mほどからゴール入線まで、通常のタイミングとなる映像に切り替わるので0.1秒映像が欠損するんですね。例えば昨年の有馬記念、勝ったイクイノックスの走りのリズムに注視しながらレース映像を改めて見てください。画面が切り替わった瞬間走りのリズムが乱れるように感じるはずです。
車載カメラ・レールカメラ
馬場の内側から撮影される車載カメラや新潟芝外回りコースで見られる外ラチ辺りで馬と併走するような映像。これは0.4秒少々遅れています。正面スタンドからの通常映像に切り替わった際、「あれっ、いつの間に手前を替えていたんだ?」というケースが時々起こります。
馬場の内側から撮影される車載カメラや新潟芝外回りコースで見られる外ラチ辺りで馬と併走するような映像。これは0.4秒少々遅れています。正面スタンドからの通常映像に切り替わった際、「あれっ、いつの間に手前を替えていたんだ?」というケースが時々起こります。
スタート時の地表からの映像
これもG1レースで見られる映像ですが、正面スタンドからの通常映像と比べ0.7秒ほど遅延が発生しています。全頭が見切れてから通常映像に切り替わりますが、その間、1完歩半以上分の映像が欠損している形になります。
これもG1レースで見られる映像ですが、正面スタンドからの通常映像と比べ0.7秒ほど遅延が発生しています。全頭が見切れてから通常映像に切り替わりますが、その間、1完歩半以上分の映像が欠損している形になります。
したがって昨年の日本ダービーでは計4つとなる別々のタイムゾーンがあるような映像となっているんですね。細かな映像解析をするのが非常に難しいのですが、そこは複数の映像を使用すれば解決できます。
さて、このサウジカップではリアルタイムで先頭馬の通過タイムが表示されていますが、このTweetのように正確性がまるでありません。
一部は推測値となりますが、パンサラッサは日本式でこのようなラップタイムを刻んでいたものと思われます。
1:49.6:12.5-11.1-11.1-11.3-12.1-12.4-12.6-12.6-13.9
前半800mは46.0程度。前傾度の高いペースバランスで走っていたのは間違いありません。それでは吉田豊騎手鞍上で戦った芝レースと前半800mでの平均完歩ピッチの比較をしてみましょう。
実に気合が乗っている状態だったからか、おそらくキャリアハイのピッチでスタートダッシュを決めすんなりハナに立ちました。そして注目すべき点は100~600mまで、ほぼ同じリズムで走り続けています。緩める気配など全くなくイーブンペース走行している状態です。これでは他馬が追走に苦しむのは当然でもありました。そんな走りの中、600~700mではさらにピッチが速くなっているのです。なぜこうなったかという要因は、スイスイ気持ちよくジオグリフを行かせたC.ルメール騎手のせい(笑)。ジオグリフもまた抜群の行きっぷりでした。そのジオグリフに煽られた影響でパンサラッサはさらにピッチを速めるシーンが訪れていたのです。ただ、パンサラッサに迫った直後、さすがにC.ルメール騎手が抑えにかかったのでその後はパンサラッサもペースを緩めることができました。それでも後続をどんどん引き離した2022天皇賞・秋より遥かにペースは速いです。パンサラッサは次の区間を0.420-0.431秒/完歩のピッチでクリアしていきましたが、もしこのサウジカップと同様のリズムで天皇賞・秋を走ると前半1000mは以下のような推定ラップとなることでしょう。
2022天皇賞・秋
57.4:12.6-10.9-11.2-11.2-11.5
57.4:12.6-10.9-11.2-11.2-11.5
推定ラップ
56.4:12.5-10.8-10.8-10.9-11.4
56.4:12.5-10.8-10.8-10.9-11.4
中間点で1秒速くなります。それくらいペースの速い逃げだったということになります。次は後半1000mでの平均完歩ピッチの比較をしてみましょう。
L700mまでパンサラッサは徐々にピッチを遅くしています。そしてL700mからラストスパート開始。スピードは落ちる一方ですが後続勢は追い付き始めた途端、突き放されるような形です。それにしても序盤で相当余力を消耗していたはずのパンサラッサですが、ゴール板まで脚を良く回転させています。私の計測結果ですが、最後の直線区間となるL400~200mでの平均ストライド長は6.74mに対しL200~0mでは6.26m。ストライドが50cm近くも短くなるほど筋力は疲弊していましたが、最後の最後まで頑張って脚を動かそうとしていました。この根性は大絶賛する他なりません。素晴らしいの一言でした。
一昨年BCディスタフでのマルシュロレーヌの勝利に続いての快挙となるサウジカップの勝利だったわけですが、本場米ダート界の強者が参戦する中距離ダート戦で通用するためには芝で走れる馬が望ましいとか、今回のようにワンターンコースなら向くとか、いろんなことが勝利を上げる以前から語られてきました。私はペースの問題ということを昔から言い続けてきたのですが、その具体例をお見せしたいと思います。6頭のグラフなので見にくいかと思いますが、2頭ずつセットで比較してみましょう。
一つ目の組み合わせはピンク色テーオーケインズと青色Malathaatの比較。テンの100mでの完歩ピッチはテーオーケインズがやや速いくらいですが、その後は大きく差が付いています。そしてL400mからはドラスティックに2頭の完歩ピッチの速さが逆転しています。赤色ジュンライトボルトと黄色マルシュロレーヌも同様のスタイルですね。ジュンライトボルトは進路がスムーズに開いていればL300mから完歩ピッチがグンと速くなっていたはずです。そしてこの4頭、いずれも1周コース1800m(9F)戦で差して勝った馬たち。中京ダート1800mコースの1~2コーナーはかなりタイトでスピードが上げられない側面がありますが、それはあくまでも遠心力にスピードが吸い取られるだけのことであって、このテーオーケインズとジュンライトボルトは明らかに完歩ピッチを大きく緩めている=コーナーとは関係のない部分でペースを大きく緩めている、ということ。過剰なくらいのペースダウンです。当然ながら逃げ馬のペースダウンに伴った形ですが、これが日本のダート競馬の縮図。米ダート競馬とは全く性質が異なるんですね。その一方、現に日本馬のマルシュロレーヌが米ダート競馬のスタイルで勝ったわけで、根本的な相違点は何かというと騎手の意識の違いです。日本競馬は芝だろうがダートだろうが、末脚温存が基本中の基本。この4頭とサウジカップ2着Country Grammerを加えた5頭のデータを後半1000mスパンで見ればテーオーケインズとジュンライトボルトのレースぶりが米ダートレースとは違うのがより分かりやすいかと思います。
L1000~900mで最も完歩ピッチの遅いテーオーケインズが、Country GrammerやMalathaatより遥かに速いレベルまで完歩ピッチを速めてスパートしていることが何よりの根拠。コーナーがあるかないかとか、そんな次元で語られる性質のものではなくまるで別競技を行っているかのよう。
どちらに正義があるのかというのは全く意味のない話で、例えば日本ダート競馬なら最後の直線に向くまで多くの馬が追走できているわけで、興行的にどちらがよりスリリングかと言えば当然日本ダート競馬ですね。米ダート競馬だと3コーナーを過ぎて早々と圏外となる馬が多く存在し、手に汗を握る攻防というシーンは少ないでしょう。
このテーオーケインズやジュンライトボルトのような末脚特化型の競馬でダートG1を勝ったからと言って、米ダート界の強豪馬に真っ向勝負で挑もうとするのは結構無理があると思います。挑むのなら自分の土俵上で競馬を行う視点が必要でしょう。こういったペースの違い、レーススタイルの違いという側面に言及される競馬関係者は非常に少ない印象があります。またその一方、今回光明があったのは前述のジオグリフの走り。道中余力を温存しラスト400mの特化型スパートで皐月賞を勝った馬がこれだけスイスイ追走して粘っているんですから。全ての馬とは言えませんが、中にはまだ秘められた能力を持っている馬がいるのも事実。新たな境地を見出す馬の出現に期待したいものです。そして以下のTweet。
https://twitter.com/mahmoud1933/status/1617203495505125376
https://twitter.com/mahmoud1933/status/1617203495505125376
カラ馬ヴァンヤールは騎手が乗っていないにも関わらず暴走して馬を交わしていったわけではなく、中盤緩めなかったのが大きなポイントでした。より米ダートに近いレースをしたのがカラ馬ヴァンヤールということ。
それではパンサラッサ以外の馬たちの後半1000mでの平均完歩ピッチの比較を見ていきましょう。Country Grammerもそうですが次走ドバイワールドカップへの展望にも繋がります。
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