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まじめに研究。ファミコン互換機の世界。 2 テクノロジー

「パチファミ」という言葉が象徴するように、多くの方々が互換機に対しては「粗雑」「胡散臭い」「しょせん代用品」「だがそこがいい」などなどの印象をお持ちのことと思います。ですが……。

はじめまして。ライターの 田中 "hally" 治久と申します。15年以上にわたってゲーム史・ゲーム音楽史の研究などを生業としております。近年は非公認互換ゲーム機(いわゆるパチファミなど)の世界的調査にも力を入れておりまして、先頃その世界初となる本格的データベース・アノウソライズン(Unauthorizon)を開設いたしました。およそ10000機種にも及ぶデータがここには蓄積されております。データベースは無償でご利用いただけますが、維持管理に若干費用がかかるのが悩みどころです(最低でも月60ドル程度)。

当BOOKERSでは月一回程度、アノウソライズンを構築することによって得られたさまざまな知見をお伝えしていきますので、支援の意味で各記事または月額制マガジンをご購入いただけますと幸いです。

パチファミの真価

さて本題です。「パチファミ」という言葉が象徴するように、多くの方々が互換機に対しては「粗雑」「胡散臭い」「しょせん代用品」「だがそこがいい」などなどの印象をお持ちのことと思います。昨今ではかなりしっかりした互換機もあるとはいえ、大半は実際そういうイメージ通りのものです。ただしそれはあくまで日本を含めた「先進諸国でのイメージ」でありまして、ワールドワイドな視野で見るとその存在感は全く異なってきます。

中国、東南アジア、中東、中南米、旧ソ連圏の国々では、いわゆるパチファミが与えた文化的影響というのは無視できないほど大きくて、それに目を閉ざすならば世界の1/3くらいの国々ではゲーム文化史の最初の1ページが綴れなくなってしまうというくらいのものだったりするのです。

いやいやご冗談でしょうたかがパチファミでしょう、と思われるかもしれませんが、そういう方にはまず以下の図をご覧いただければと思います。
世界市場における海賊版ファミコンの浸透度(1980年代~2000年代初頭。筆者調べ)。世界的に見ると正規品のみが流通していた地域(緑色)はごく僅かしかなかったことがお分かりいただけることと思います。赤色の地域では正規品のファミコンがほぼ流通せず、海賊版が独占。橙色の地域では正規品と海賊版が拮抗。黄色の地域は限定的ながらも一応海賊版が流通。
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こうした状況であるにもかかわらず、互換機研究の重要性は長年にわたって一部の好事家以外には全く理解されてきませんでした。ゲーム史研究における巨大なミッシングリンクと言っても過言ではなく、手遅れになる前に包括的な研究に着手しておく必要があると考えましたが、研究に必要となるであろう統計的な資料はまったく整備されていないのが現状でした。研究の前段階として、まずデータベースを構築しなければ先に進めないと分かったのです。そうしてそれを具現化したのが、最初に述べたアノウソライズン(Unauthorizon)です。構築にあたって何を考え、どういったことを重視したのかについては、4Gamerさんに記事を書かせていただいたので、そちらも合わせてお読みいただけましたら幸いです。ファミコン互換機がどのようにして誕生し、どのようなトレンドが打ち立てられていったのかについてもまとめております。
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