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ファミコン互換機の製造数は?「AARONIX」「ZONIC」編【第4回】 1 テクノロジー

ファミコン互換機を巡る大いなる謎、「互換機はどれくらいの数が作られたのか?」に迫る。連載第4回はセガ公式代理店から大手ファミコン互換機メーカーへと転身した「AARONIX」こと嘉霖行、およびその販売部門である「ZONIC」こと勝天電子に焦点を当てます。

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嘉霖行と勝天電子

これまで台湾晶技(TXC)、大雅電子(DAR YAR)、任天堂電子(NTDEC)と、台湾の大手ファミコン互換機メーカー3社を見てきました。続いてその他の大手メーカー5社(前々回参照)を追いかけてみようと思いますが、これらの企業に関しては、報道資料等から具体性のある数値を見つけることができずにいます。
とはいえ他に手がかりとなるものがないわけではありません。特に注視すべきは製品のシリアルナンバーです。ナンバリングがわりと素直で、比較的くっきり製造状況がうかがえるメーカーのひとつとして、今回は勝天電子(Zonic Electronics)を取り上げます。
勝天電子について語る前に、まずその前駆組織である嘉霖行股份有限公司(Aaronix Industries)について説明しておく必要があるでしょう。同社は1980年に蔡嘉文なる人物によって設立された電子機器の製造・輸出入業者でした。遅くとも1983年には電子玩具類を取り扱うようになっており、その頃には「阿羅士(AARONIX)」のブランドを用いはじめていたようです。

セガ公式がファミコン互換機の製造に向かう

嘉霖行は1985年にセガの公式代理製造~販売代行業者となり、セガSG-1000やマークIIIの台湾ローカライズ版を「阿羅士(AARONIX)」あるいは 「虎威(FULLWIS)」の名で発売するようになります。その後1987年にファミコン互換機の製造・販売に乗り出し、いわばその販売部門として勝天電子が設立された形になります。
いきなりセガ公式からファミコン互換機に軸足を移したのは、「阿羅士」よりも圧倒的に売れると見込んでのことだと思われますが、もしかすると海賊版SG-1000メーカーである佳寶電子工業股份有限公司(Way-up Corp.)との法廷闘争に敗北したことも影響しているかもしれません。驚くべきことに著作権を争って公式が負けたのです。結局のところ台湾市場では公式より海賊版が上手くやっていけるのだということを、嘉霖行も思い知らされたことでしょう。
嘉霖行より「阿羅士第3代」の名称で売り出された台湾版セガマークIII。画像出典
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AARONIXとZONIC

嘉霖行・勝天電子のファミコン互換機は1989年時点で台湾におけるトップシェアを誇っていました。この頃ビデオゲーム製造量の45%、市場流通量の65%以上を占めていたといいます(『中國經建月報』 第 11~20 号 1989 p.77)。「日本製よりも高品質」を謳い、販売価格も他の互換機に比べて100~150台湾ドル高かったそうです。ブランドは当初主に「阿羅士(AARONIX)」および「勝天(ZONIC)」のふたつを用いていましたが、次第に後者に一本化されていきます。
海外進出は大手他社に比べて一年ほど遅かったものの順調にシェアを伸ばし、1989年時点では製造量の約40%が海外向けとなっていました(前掲書)。勝天の製品は特に韓国、タイ、中国本土で目立った成果を上げています。なかでも初期の中国本土市場ではTXCと市場を二分する存在だったといいます*。勝天は1988年、厦門に中国支社を設立しますが、やがて本社機能はそちらに吸収され、台湾の勝天は早くも1991年に解散しています(嘉霖行のほうは1999年まで存続)。
勝天製ファミコン互換機のデザインには、主として3つの系統があります。

A) 本家ファミコン模倣型

7000~8000型番(ただし型番なしのもの多数あり)。シリアルナンバーは「21」「H77」「HA」「XM」といった先頭コードに6桁ないし7桁のナンバーが付随する。
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B) 独自デザイン標準型

9x9/9x00型番。シリアルナンバーは「HK」の先頭コードに6桁ないし7桁のナンバーが付随する。
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C) 独自デザイン高級型

AX99x0型番。形状は3種類(後述)。シリアルナンバーは先頭コードなし、あるいは稀に先頭コード「1」「9」を使用し、6桁ないし7桁のナンバーが付随する。
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なお上記のフォーマットに当てはまらない例外的ケースもあります。もっとも目立つのはタイ向けの製品で、デザインの系統を問わず先頭コード「G」で始まる7桁のナンバーとなっています。これについては後でまとめます。小さなところでは、今回調査した約120台のうち8台に、上記以外の先頭コードを使うなどの逸脱が見られました。これらの詳細は引き続き調査中です。
* 「沉默的人 ——中国电视游戏业往事」(《家用电脑与游戏》2009年3期)

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ファミコン互換機の製造数は?「AARONIX」「ZONIC」編【第4回】
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