Mahmoudの競馬エッセイ vol.014 「助走距離」
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前回のvol.013「マンダリンヒーロー」でアメリカ競馬における助走距離について触れましたが、競馬場毎、施行距離毎にさまざまな助走距離が設けられています。Resultの表記では「Run-Up」という項目になりfeetで表されていますが、JRAでの競走においては基本同一の助走距離。公式発表は見たことがありませんが基本助走距離はおそらく5m。しかし一部の施行条件においては長い助走距離が設けられているケースがあります。代表的なのはダート1200m。中山競馬場では大井競馬場と同じくらいの10m近い助走距離となっていて、新潟競馬場もそれに近い長さの助走距離があります。また両競馬場とも芝馬場からのスタート。現在ダート1200mは5場で開催されていますが前半200mのラップタイムは当然差が出てきます。現中京競馬場となってからの2012年以降の集計値となる良馬場前半200mの公式ラップの平均値は以下の通りです。項目は左から競馬場名・前半200mラップタイム平均値・勝ちタイム平均値・レース数です。
古馬混合1勝クラス
中山 12.00 1:11.83 192
新潟 12.01 1:11.74 153
阪神 12.32 1:12.07 94
京都 12.45 1:12.08 90
中京 12.53 1:12.32 131
中山 12.00 1:11.83 192
新潟 12.01 1:11.74 153
阪神 12.32 1:12.07 94
京都 12.45 1:12.08 90
中京 12.53 1:12.32 131
古馬混合2勝クラス
新潟 11.90 1:11.02 32
中山 11.95 1:11.33 120
阪神 12.25 1:11.57 62
京都 12.38 1:11.54 55
中京 12.40 1:11.62 29
新潟 11.90 1:11.02 32
中山 11.95 1:11.33 120
阪神 12.25 1:11.57 62
京都 12.38 1:11.54 55
中京 12.40 1:11.62 29
阪神・京都・中京競馬場は通常の5mの助走距離でALLダート。前半200mのラップタイムは二分化されているのがわかるかと思います。また、この前半200m区間は中山のみ若干の下り、阪神は平坦、新潟は僅かな上り、京都・中京は1mに満たない程度の上り。同一の馬場の速さの下、前半200mが最も速くなるのは中山、次いで新潟。阪神・京都・中京は少し上っている分の差が出るという形になります。したがって前半200mのラップタイムを比較する場合、この条件の違いを考慮しなければなりません。阪神競馬場をベースにすると、中山・新潟は概ね0.3秒速い、京都・中京は概ね0.1秒遅いということ。より細かく比較値を設けるなら新潟より中山の方が0.05秒前後速いとすべきですが、新潟は追い風・向かい風の影響が最も大きくなる競馬場で、中山競馬場も新潟に準ずる程度、風の影響度はよく現れます。
その他、JRAダート競走のチャンピオンディスタンスとも言える1800mでも一部助走距離が異なるケースがあります。それは京都競馬場。ダートコース1周は1607.6m。したがって1800m戦のゲート設置位置はゴール板まで残り1800-1607.6+5=197.4mの場所となるわけですが、残り200mのハロン棒があるため、その地点にゲートを置くことができません。結果、残り200mのハロン棒の後方にゲートが置かれることとなり、その助走距離は10m近くになっています。この京都ダート1800mにおける前半200mは平坦なのに対し、阪神ダート1800mにおける前半200mは上り坂が含まれています。したがってこの2場は前半200mのラップタイムに大きな差、概ね0.5秒の差が生まれます。明日から始まるニュー京都競馬場ですがコースレイアウトに大きな変更はないため、このダート1800mでの助走距離の長さは従来同様になるのではと思います。
以上のようにラップタイム比較という観点においては、その値がどういった条件でマークされているのかという背景をしっかり反映させる必要があります。この助走距離の違いやコース形状の違い等を調整すると、同一価値となる基準ラップタイムというのが各競馬場に設けることができます。また、私がいつも出している平均完歩ピッチという概念は、競馬場が違っても同一の価値として考えることができる一つの指針データでもあります。
来たる日本時間2023-05-07に開催のケンタッキーダービーが行われる米チャーチルダウンズ競馬場ダート2000m。EquibaseのResultでは2021年から助走距離(Run-Up)が55feet、2009~2020年が34feetと記されていますが、助走距離が55feet=16.76mになったのは正しくは2020年からですね。また、2008年以前のRun-Upは0feetとなっていますが、助走距離がないアメリカ競馬はおそらく1レースも存在していません。2019年までは34feetあるいは55feetで行われていたと考えられます。1973年Secretariatが1:59.4のレコードをマークした時のRun-Upはおそらく55feet。近年で最も勝ちタイムが遅かったのは2010年「Sloppy」の馬場でSuper Saverが勝った2:04.45。助走距離を踏まえつつこの走破タイムを大井競馬場ダート2000m戦で換算すると2:03.9程度。2014年のジャパンダートダービーを勝ったカゼノコの勝ちタイムと同程度。土と砂という違いが大きいのですが、時計の掛かり方は大井競馬場ダートと近い年もあります。それではケンタッキーダービーのラップタイムと、デルマソトガケが逃げ切ったUAEダービーでのラップタイムとを補正しつつ比較してみようと思います。助走距離が設けられている米チャーチルダウンズ競馬場と、ゲートオープンと同時にタイム計測が始まるUAEダービーは単純なラップタイム比較が困難ですから。
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