Mahmoudの競馬エッセイ vol.118 「2026年ドバイワールドカップ、フォーエバーヤングの敗因」
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先日行われたドバイワールドカップでのフォーエバーヤングの敗因について、完歩ピッチの観点から述べていきたいと思います。今回のデータは通常通り100m区間の平均値。フォーエバーヤングは100mを13~15完歩で走破していますが、例えばきっかり13完歩を6秒で走っていたとしたら、1完歩に要する平均秒数は0.462秒。騎手が「行け」とサインを送れば必ずピッチは速くなり、「待て」とサインを出せば必ずピッチは遅くなります。また、サインの強弱によってピッチが速くなったり遅くなったりする度合いも変わってきます。そして全開スパート時で激しく追われると、その時点での余力に応じたMAX値までピッチは速くなり、その後は疲れてくるので徐々にピッチが遅くなっていきます。騎乗馬に対する騎手の指示が明確な値となって現れるので、どの区間で速く走ろうとしたか、あるいはペースを緩めようとしたかを、コース形状や馬場の速さに関係なく一律で比較できます。個別ラップタイムを見るより、ペース推移を正しく判断できることになります。
データの対象レースは2025-04-05ドバイワールドカップ、2025-11-01BCクラシック、2026-02-14サウジカップ、そして今回の2026-03-28ドバイワールドカップの4レースです。まずは前半区間の比較から。1800m戦サウジカップのみ前半800mのデータとなっています。
2026年サウジカップは緩めのスタートダッシュとなっていましたが、前半500m以降2025年BCクラシックと2026年サウジカップは完歩ピッチの緩み方が少ないので、フォーエバーヤングの追走ペースが徐々に遅くなっていく度合いが少ないことを意味します。2025年ドバイワールドカップは2コーナー、前半600m辺りからかなり緩みましたが、逃げていたWalk
of Starsの外から2着となったMixtoがプレッシャーを掛け、ペースがグンと上がりました。そして今回の2026年ドバイワールドカップは、昨年ほどではないもののフォーエバーヤングが勝った2レースより緩んでいます。前半の追走ペースに関して、2025年BCクラシックと2026年サウジカップの、さほどペースダウンしなかったグループ、2025、2026年ドバイワールドカップの、ペースダウンがやや大きかったグループと、二分化している要素があったと考えられます。次は後半1000mのグラフをご覧ください。
丸印は3~4コーナー区間を表します。2025年ドバイワールドカップは前半の追走ペースが相対的に最も遅かったのに、後半は全体的に見ても完歩ピッチが速くなるどころか、遅くなっているくらいで、ラストスパート時にはかなり疲弊していたことが伺えます。同一馬とは思えないくらい、後半全くピッチが速くなっていないので、状態がかなり良くなかったと推測されます。この前走のサウジカップでRomantic Warriorと死闘を演じた影響だったかと考えられます。したがって2025年ドバイワールドカップは他の3レースと比較するのは妥当ではないレースと言えることでしょう。
2025年BCクラシック、2026年サウジカップ、そして今回の2026年ドバイワールドカップの3レースは、前半区間と同様に二分化しているのがイメージできるかと思います。2026年ドバイワールドカップは3コーナーから追走ペースが速くなっていますが、2025年BCクラシックと2026年サウジカップは3コーナーに進入しても、逆に緩めるくらいで追走できています。その結果、2025年BCクラシックと2026年サウジカップは4コーナーからスピードアップし、きっちりラストスパートが行えているのに対し、2026年ドバイワールドカップでの後半の最速完歩ピッチ区間は3コーナー辺りとなるL800~700m。全開スパートが相当前倒しとなったことにより、逃げていたMagnitudeに迫っていける余力はなかったと言えるでしょう。次はそのMagnitudeと平均完歩ピッチを比較してみましょう。まずは前半区間。
終始Magnitudeの方が完歩ピッチの値が遅いので、即ちストライドが大きいのはMagnitudeの方となります。また、2頭の値の差が最も大きいのは0~100mですが、すぐに先頭に立ったのはMagnitude。フォーエバーヤングよりもストライドが大きいのと同時に、ゼロ発進時のストライドはさらに大きいわけで、これはMagnitudeの方が瞬発力に優れているという意味となります。基本的に瞬発力と相反するのが持久力。フォーエバーヤングの方が持久力に優れているという意味にもなります。この2頭には、こういった走りの特性の違いが存在します。次は後半1000mの比較。
3コーナーに進入してからのL900~600mは、2頭とも似た波形となっていますが、この区間は外ラチからのレース映像となっているので、騎手の挙動がわかりやすく映っていました。どちらもL800~700mがピークとなって、次のL700~600mは遅くなっていますが、フォーエバーヤングは鞍上の坂井瑠星騎手が懸命に促していても完歩ピッチが遅くなっているのに対し、Magnitude鞍上のJ.オルティス騎手は後ろを振り返ってフォーエバーヤングの手応えが悪いのを確認し、緩めようとしていたのです。2026年ドバイワールドカップのハイライトシーンはココでしたね。L900~600mの波形は同じように見えてもその中身は実に対照的で、その結果、4コーナーL500~400mでは2頭ほぼ同じ値となり、ホームストレッチ区間であるL400~200mでは逆にMagnitudeの方が速い完歩ピッチとなっていました。逃げていたMagnitudeは余力を保ってラストスパートを行うことができ、フォーエバーヤングはその逆で、これが勝因と敗因になるのではないかと考えられます。3コーナーからのペースアップにフォーエバーヤングは対応できなかったのが顕著なレースとなりました。
管理する矢作調教師のレース後コメントで、「(勝負どころで)あの持ったまま上がっていくような手応えがない」とありました。
この「あの持ったまま上がっていくような」というのは、自身無理をしないペースで3コーナーから走れたからこそ成し遂げられたわけで、ドバイ・メイダンの馬場の影響によるものとはデータ的には考えられません。前述の通りMagnitudeの方が瞬発力は上なので、例え大トビであってもコーナーワークはフォーエバーヤングより上手いのはある程度想像が付きます。仮にフォーエバーヤングに勝ち筋がある展開は何だったかを考えると、3コーナーからMagnitudeが容易くペースアップできない展開、即ち、残り900m辺りまで、もっとタイトなペース推移でレースが進む形に持っていければ、という辺りになるのかと思います。勿論自身がバテてしまうリスクがあり、上手く行くかどうかは断定できませんが、Magnitudeにもっと余裕のない逃げとなるよう、背後からプレッシャーを掛けられたらワンチャンスあったかもしれません。
最後になりますが、このデータからの個人的な見解では、2025年BCクラシックでフォーエバーヤングが負かした馬たちより、今回のMagnitudeの方がいくらか強い相手だったという感想です。今回はフォーエバーヤングがMagnitudeの土俵に乗っかって戦ってしまったというイメージです。最終的な着差は0.17秒。ラスト200mでは差を詰めていますし、前述のように背後からプレッシャーを掛けるのではなく、末脚温存の待機策で4コーナーまで我慢し、ホームストレッチに全てを掛ける勝負でもMagnitudeを捉えるチャンスはあったかもしれません。いずれにせよ、コーナーワークは決して良いわけではないという特徴を逆に活かして、次戦以降頑張って欲しいものです。
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