2020年産馬クラシックロード vol.046
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リバティアイランドとマスクトディーヴァに絞って秋華賞を振り返っていきますが、当マガジンの下地原稿を検索するとマスクトディーヴァの新馬戦は指数値に言及したのみで走りの質を説明した形跡が見つからなかったので、改めてデビューからの一連の走りを振り返ってみたいと思います。まずは新馬戦と2戦目忘れな草賞の完歩ピッチと平均ストライド長の推移から見ていきましょう。
新馬戦は良い意味でモッサリとした感じでゲートを出ていきました。鞍上吉田隼人騎手も決して急かすことなくスタートダッシュさせていた点は非常に良かったと思います。デビュー戦で2000mを選んだ点もこういったマスクトディーヴァの特徴を鑑みてのことだったかと考えられます。ラストスパートのピーク区間はL500~400m区間。その後、値が上下している通り初戦ならではといえる上手なスパートではありませんでしたが、ゴールまで脚色が衰える素振りはほとんど感じられず。L200~100mで一旦ピッチが遅くなっているのは手前替えの影響。ラップタイムの最速区間はL200~0mでL400~200m区間の坂を考えると実質的には加速ラップを刻んだほどではありませんが、ラスト450mは実質絶えず一定のスピードで駆け抜けた形。父ルーラーシップと質が似た感じの見事な末脚でした。とりわけラスト200mでのストライドの伸びが目立ちます。続く忘れな草賞は新馬戦の内容からしてまず負けることはないだろうと思っていましたが、よもやの7着に敗退。この敗因には明確な要素がありました。3~4コーナー中間、コーナー半径の緩い区間となる残り670m辺りから逆手前となり残り570m辺りまで13完歩で走破。そこから順手前となる右手前に替えスピードアップしたのですが、内から4mほど外の進路でも阪神内回り4コーナーを曲がり切れません。200mのラップタイムで11秒前半のスピードレンジまで上がるともう苦しい状態。父ルーラーシップはトビが大きく、しかもコーナーで内傾して走るのが苦手なタイプ。体付きは父よりこじんまりしているマスクトディーヴァですが、このコーナーを走るセンスは父を引き継いでいます。
このコーナリングに関して個人的見解を書いておくと、コーナリングが上手な馬はコーナーでスピードを上げやすく下手な馬はスピードを上げにくいと評するのが一般的。しかしJRAのコースなら4コーナーを回ってからどんなに短くても250m以上直線を走ることになるわけで、イメージ論としてはコーナリングで消耗度が激しいか激しくないか、それによってその後の直線での末脚に影響が出る、と考える方が良いと考えます。例えば直線400mのスパート能力が互角である2頭がいたとします。最後の直線の長い東京競馬場や新潟競馬場外回りでは同等の結果となることでしょう。その2頭の内、A馬はコーナリングが上手い、B馬はコーナリングが下手だとします。その2頭が中山競馬場でラスト400mのスパート勝負をした際、最初の90mがコーナー区間。ここを2頭が同スピードで走るとA馬よりB馬の方が体力を多く使わねばならず余力消耗度に差が生じます。その結果、その後の直線310mでのスパートに差が出てしまうわけです。同じ相手でも東京競馬場や阪神競馬場外回りだと苦戦するのにローカル開催だと互角以上の結果を出す構図がこれです。
ちなみにコーナリング能力の優れた代表的な1頭が2009年有馬記念を勝ったドリームジャーニー。同馬は東京競馬場での成績が今一つで当時左回りが問題とされる声を聞いたことがあるのですが、ピッチ走法で反応の良いタイプであり最後の直線が長いコースはあまり好条件とは言えなかった馬で、東京競馬場では当然コーナリングの上手さによるマージンを得られなかっただけのことだと私は思います。1周1400m少々しかないコースが大多数となるアメリカの芝レースにでれば相当な活躍が見込めた1頭。3~4コーナーで楽に捲りを打ちブリーダーズカップターフを勝てた可能性は相当高かっただろうと今でも考えます。
コーナリングが上手くない馬はコーナーでどう走るのが良いのか、それは単に遠心力が減っていく外を通るのが一つ、そしてもう一つはコーナーで無理をしないということ。マスクトディーヴァの父ルーラーシップはインの3番手から2012年クイーンエリザベスⅡ世カップを勝ちましたが、この時の同馬のラスト1200mにおける400m毎のラップタイムは25.73-23.69-21.81。最後の直線が約430mある香港シャティン競馬場でコーナー区間をできる限りスピードアップせず走り、4コーナーをクリアしてから一気に脚を使うというレースぶり。コーナリングに難のある馬のお手本と言うべき走りでした。ただ、最後の直線が400m以上あるから可能だったという側面もあります。
マスクトディーヴァの忘れな草賞に戻りますが、4コーナーを上手くクリアできずようやくエンジン全開となったのが残り200mから。ラスト200mは他の馬より最も速く上がっています。それは同日の桜花賞でリバティアイランドがマークしたラスト200mとほぼ同じラップタイム。施行距離が違う、内外回りの違い、そして全開区間の違いがあるので単純に同列に扱う物ではありませんが、同ラップタイムで走ったというのは事実でもありました。既にこの忘れな草賞と桜花賞の日から、リバティアイランドとは何かと縁があったと解釈しても良いでしょう。次は2勝目を上げた3歳1勝クラスと日本レコード勝ちとなったローズSの完歩ピッチを比較してみます。
ローズSでは3歳1勝クラスと比べてL1800~1700m、L1600~1500m、L200~100m区間でピッチが遅くなっているだけ。つまり3歳1勝クラスより遥かに労力を使って追走していたにもかかわらず、全開スパートでのピッチレンジは格段に速くなっています。まるで初戦でマトモに走れず2戦目で一気にパフォーマンスアップした2歳若駒みたいな一変ぶり。この3ヶ月の間に急成長を遂げたのか、あるいは3戦キャリアを消化し頑張って走る術を覚えたのかわかりませんが、明らかに強くなって3歳秋を迎えることとなりました。L200~100mでガクンとピッチが遅くなっているのはソラを使ったからでしょう。次はローズSと秋華賞での完歩ピッチ比較。
鞍上岩田望来騎手がレース後「いつも通りに出てくれていたらもう少しいいポジションを取れていたと思います」とコメントしていましたがテンの100mの平均完歩ピッチはキャリア最速。いつも以上にゲートを出てダッシュしていたのは確かで、過去4戦よりスタートダッシュの速い馬が揃っていた今回の秋華賞ですから、この序盤のポジションは相対的に仕方のないことだと思います。初戦と2戦目、過度に急かせずスタートダッシュさせていたからこその同馬の末脚が光る形となっているので、このポジションは織り込み済みと捉えるべき馬だと考えるのが妥当なことでしょうし、次走以降も序盤の位置取りに固執せずレースを行って欲しいところです。そして問題のラストスパートの経緯。ローズSで全開区間となったL400~300mでは逆にピッチが遅くなっています。進路がなかった影響なのですが、仮に今回の秋華賞で脚を余したと見るなら、ローズSのように100m早いタイミングで全開スパートとなる必要があります。今回の舞台京都競馬場内回りの最後の直線の長さは328.4m。つまり4コーナーで全開走行とならなければならないわけで、それが可能な馬なら前述の通り忘れな草賞であのような走りとならずに好走していたはず。今回スムーズさを欠いたラストスパートだったのは確かですが、もっと早く仕掛ければとか、内目を付いてだとかというのはマスクトディーヴァにとっては酷な願望と思わざるを得ません。リバティアイランドもそうですが、ピッチ走法の利を生かしたモリアーナのようなイン突きは実現困難なのがマスクトディーヴァですね。
この秋の余勢を駆ってジャパンカップに挑戦してくれないかと期待していましたが、この後は休養に入るとのこと。この2戦、目一杯に相当弾けていたので良い選択とも思います。2000m戦の新馬を選択したように道中じっくり行けば見事なラストスパートを見せるのがマスクトディーヴァのストロングポイント。私の見立てでは距離の合うゾーンは2400mじゃないかと感じますし、マイル戦のスピードレンジで追走させるような形は避けて欲しいのが本音です。来年はさらにステップアップしていくことを期待しています。
次にリバティアイランドの秋華賞の走りを振り返ってみましょう。勝つことに徹していたことが伺えるシーンがあります。具体的にはリスクをできるだけ減らす戦いだったことでしょうが、リスクを減らすというと一見安全策を採ったようにも思えてしまいます。しかしそうじゃありません。まずは全6戦の前半800mの完歩ピッチの比較から。
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